野ぶたのつぶやき

野ぶたの日々を淡々と

SHIROBAKO劇場版を見て

今さら、アニメ映画・SHIROBAKOの劇場版を見てきました。


劇場版「SHIROBAKO」本予告【2020年2月29日(土)公開】

 

以下、思うところをつらつらながながと。

1. 「お仕事もの」ってむつかしい

SHIROBAKOは、制作会社であるP.A.WORKSが「働く女の子シリーズ」として作っている作品群の1つ。SHIROBAKOの場合、舞台がアニメーション制作現場なので「アニメ界をメタ的に楽しむ」作品という要素もあるのですが、基本的には「お仕事もの」。

 

そういう目線でみると…リアル志向のあるお仕事ものって基本的に「カタルシス」がないんですよね…(苦笑)。

どんな仕事も、成功したり失敗したり。でも基本的に仕事にエンディングはなくて、1つの仕事が終わったら次の仕事が待ってる。仮に退職したところで自分の仕事の続きを誰かがやってる。

だから…「お仕事もの」は倒産でもしない限り「俺たちの戦いはこれからだ」エンドになるし…ネタバレするとこの映画もそんなエンディング。それを踏まえたうえで、観てからすっきり帰ってもらうためにラスト直前でどう盛り上げるのか、その苦心の跡が大いに見られた作品でした。

その工夫をもってしても、すっきり晴れ晴れエンディング、とはいいがたいかな?とは個人的に思いましたが…このテーマ的にはあれが限界やろね~。

 

2.「仕事もの」としての個人的印象

個人的な話なんですが…このSHIROBAKOのTV版が放送されたのは、私が今の職種に就くようになってしばらくしたころ。私的には同じ業種にこれだけの期間就いていたことはないわけですが…じゃあ、その間に仕事を覚えて一人前になったのか、と問われると…まあなんぼでも言い訳を繰り返すしかない状況ではある。

TV版でメンバーそれぞれの成長を描いていたSHIROBAKOのことだから…その後談を劇場版でやる以上メンバーがさらに成長した姿を描くんだろう、映画館で見る前はそんなことを予想していたのです。

この予想は、最初であっさり裏切られます。「劇場版はTV版の4年後」という設定ですが、その間に会社ではえらいことが起こって会社のメンバーは他社にいったり辞めたり。当然、その中でキャリアを積み重ねている人もいるんですが、完全に燻っている人もいる。そして、それぞれの立場で違う課題を抱えていたりする。

劇場版では、その「会社でのえらいこと」のせいでやりかけになっていたものをベースに新しいプロジェクトに取り組む中で、バラバラになっていたメンバーが前を向いていく、というストーリーが進んでいきます。

どんな仕事とて思い残したことやり残したことはあって。でも、結局は今やってることへ前向きに取り組むほかない。そして、そんな中で思い残していたことややり残していたことが役に立つこともある。個人的には納得するストーリーだった。

そして…そんなストーリーの中で途中まで迷ったり燻ったりしていた人もなにか成長していく。「問題に立ち会って、何かをやらないことには成長しない」というメッセージは…まあ正論よな~、と。納得はして、わかっちゃいるんだけど…なかなか重たいメッセージでした。

3.アフターコロナ公開映画としての印象

2月末公開のアニメ映画。コロナ禍の影響をもろに被った映画の1つです。

コロナ禍到来後に映画館に入ったのはこれが初めて。入り口ではサームグラフィ搭載のスマホみたいなので体温を測られるなど前と変わったこともありましたが、映画館が入っているショッピングモールの盛況も含め、日常が戻ってきつつあることを実感できた映画体験になりました。

スタッフや協力会社に日本の会社が多かったことは功を奏したかもしれません。日本よりコロナ禍が早くやってきた中国への下請けが多ければ、そもそも公開にこぎつけられなかった可能性すらある。そんな中「完成させて観られる」状態にしてくれたアニメ制作会社にはただただ感謝です。

ただ…コロナ禍による公開中断で異例のロングラン公開となったとはいえ…大阪南部では今週中にも公開劇場はなくなりそう。今回見させてもらった堺市のショッピングモール併設の映画館で、SHIROBAKOの上映は14:55開始の一回だけ。それで見ている人は10人強という数は…営業的には厳しい数字でしょう。これが今後にどう響くか、とは思うところはあったりします。

とはいえ…理不尽な理由で経営を揺さぶられてるのはこの会社だけではない。「理不尽な理由で会社のメンバーが減った」という設定は…おそらく同業他社・京アニのあの事件も念頭にあるんでしょうが…あちらもしぶとく這い上がってきてる。

 

映画を見た後、盛況なショッピングモールとその一角にポツンと空いた「インバウンド向け土産コーナーだったであろう空きスペース」の対比を見つつ、「こんなアニメマニア向けに作られた作品を見に来るお客さんがそれなりにいて、それに応える制作力がある日本」にはまだまだ地力があるのかな、と思ったりしてました。

そういう「根拠のない自信」がないと…仕事ってやってられませんもんね(苦笑)