野ぶたのつぶやき

野ぶたの日々を淡々と

韓流ドラマ「梨泰院クラス」を見て

韓流ドラマの「梨泰院クラス」を見てまして。
個人的に刺さったのは「外食産業」「情と恨」「共感とメタ」という3点。

多少は外食産業と絡むとこで働いてた感覚からすると「どこの国もなんか外食産業は変わらないなぁ」という感覚。
創業者の感性で起業し大きくなる。それを利用者も従業員もカリスマとしてあがめる。ただ、会社が大きくなる過程でうまく組織として完成することは少なく、それゆえ世襲は難しい。

そんな組織内をを「情」がつなぐ一方で「恨」で壊れるのもまた外食産業あるある。
ただ、梨泰院クラスを見てると「社会」に認められるより「親」に認められることをより求める傾向が、世襲必須の経営者層だけでなく従業員層にもそれなりにあるのは興味深かった。韓国社会のベースにあるには、地域社会や職場社会ではなく家族社会なんだろう。

多分韓国ならではなんだろうな、と思ったのは「正しければ恨んでいい」というドラマの根っこの部分を多くの人が共有していること。
社会が財閥含む仕組みの中に矛盾をはらんでいる、という事実は認めつつ、それを「正しい信念をもって克服する強いヒーロー/ヒロイン」を称賛する傾向は感じる。そして正しさがカネの力に勝つことがあっても、賢さ自体ではカネに勝てない。
それはちょっと前に見た「イカゲーム」の主人公を見たときも感じたもの。ある種の反知性主義なんだけど、日本のそれとはまたちょっと違う構図だなとは感じる。

話の作りとしては、日本のサブカル作品にありがちな「メタ目線」を露骨には取り込まないこと。わかりやすく言えば「説明キャラ」が出てこない。
理解よりも共感を重視してるんだと思うし、それがこの作品にでてくるマイノリティキャラを受容することにも繋がっている感はある。多様性という理屈を理解させるのではなく、マイノリティ側に立つ人の弱さを含めた魅力やそれを受容する人間への共感を誘っている感じはした。

ただ「ヒロイン、特にヒロインの恋愛観は共感しにくい」という見方があることもわかる。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75036?imp=0
冷静に考えてあそこまでの仕事人間とまともな恋愛をすることは難しいし、それはしかたないんだろう。


「外食産業ドラマなんだから、もっとうまくメシを作るとこを描けばいいのに」とは思ったものの…実際のところ、メシの旨さなんて何を食うかよりも誰と食うかの方が重要。まかないで「同じ釜のメシを食ってる(そんな言葉が韓国にあるのか知らないが…)」もの同士ならではの、親密さとそれゆえの感情の交差をうまく描いたドラマなのかな、と感じた。

(´-`).。oO(個人的にはラストシーンを含めて何度かでてきた漢陽都城は見てみたいな、と。ドラマのモデルになった梨泰院界隈はおしゃれな夜の街っぽいから少なくとも夜だとムードに圧倒されそうな気がする...)