”電波系地震予知”雑感
「雨の日の前、ツバメが低く飛ぶ」という話があります。
天気が悪いときはツバメが餌にする虫たちが高く飛ばなくなる、だからツバメも低く飛ぶ。そんな理屈。湿気が多くなるから虫の羽が重くなるから、とか晴れないと地上近くの上昇気流が起こらず虫たちもそんな上昇気流に乗れないから、とか言われています。
”地震予知”と言われるものの中には、動物の行動や雲の形、電波や放射性ガスの変化(いわゆる宏観異常現象)に注目するものがあります。”正統派の地震予知手法”とされてきた地球物理学的手法がなかなか結果を出せていないという焦りもあり、またなんとなくキャッチーでもあるので、ネットメディアや雑誌には割りと取り上げられるようです。
ただ、これらの現象から”予知”をする、というのは、ツバメの飛び方を見て天気予報をするようなもの。ツバメの飛び方を詳しく研究したらその餌となる虫の動きがわかるように、地震雲を詳しく見ているうちにもしかしたらそれを引き起こす原因がわかり地震の仕組みがより理解できるかもしれません。しかし、ツバメの飛び方を見て気象庁が天気予報を出さないように、電波や雲”だけ”(*1)を見て気象庁が”地震予知”をする日は来ない、そういい切っていい。
”地震予知”を看板に研究予算を引っ張り続けられるか微妙な昨今ですが、”地震研究”の潜在需要はあるはず。それをどう理論付けし説明するのか?
まともな”電波系地震研究”が育つためには”正当派地震研究”がないといけない。でも、それには一定の金が必要で金をひっぱってくるためには地震関係者以外からの理解が必要。うまくやらないと、餌の多さに負けて”変な地震予知”というツバメだけがブクブク太ることになりかねない、そんないやな予感がします。
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↑”地震予知”という言葉で予算をひっぱる今の地震学業界を強く批判した一冊。「そんなん言うたかて予算ないと基礎研究もできへんやん」とは思うけど、一理はある一冊。
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↑”地震雲”を丹念に追いかけたアマチュア研究家の書いた一冊。”地震雲”も奥が深いことを感じさせてくれる一冊。”地震雲”の観察は「アマチュア研究家」にはできたとしても「素人」にはやれるもんじゃないな、というのが個人的な印象。
*1 気象予報の人が予報する前に雲を見に行くように、”地震予知”の人が仕組みがわかった上で電波や雲”も”見に行く時代が来る可能性は否定しない。